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ビデオばかり見ている僕です
by herrokatty


おおそれみよ

おおそ~れみよ

って言っている場合か~~~~~~~~


でもないぞ。

どうしてくれるんだ。

わからない。
# by herrokatty | 2006-04-01 20:24

四月の顔

  雪のある国へ帰るお前は

風のやうにおまへはわたしをとほりすぎた。
枝にからまる風のやうに、
葉のなかに真夜中をねむる風のやうに、
みしらぬおまへがわたしの心のなかを風のやうにとほりすぎた。
四月だといふのにまだ雪の深い北国(ほつこく)へかへるおまへは、
どんなにさむざむとしたよそほひをしてゆくだらう。
みしらぬお前がいつとはなしにわたしの心のうへにちらした花びらは、
きえるかもしれない、きえるかもしれない。
けれども、おまへのいたいけな心づくしは、
とほい鐘のねのやうにいつまでもわたしをなぐさめてくれるだらう。


  焦心のながしめ

むらがりはあをいひかりをよび、
きえがてにゆれるほのほをうづめ、
しろく しろく あゆみゆくこのさびしさ。
みづのおもての花でもなく、
また こずゑのゆふぐれにかかる鳥のあしおとでもなく、
うつろから うつろへとはこばれる焦心(せうしん)のながしめ、
欝金香(うつこんかう)の花ちりちりと、
こころは 雪をいただき、
こころは みぞれになやみ、
こころは あけがたの細雨(ほそあめ)にまよふ。


  四月の顔

ひかりはそのいろどりをのがれて、
あしおともかろく
かぎろひをうみつつ、
河のほとりにはねをのばす。
四月の顔はやはらかく、
またはぢらひのうちに溶(と)けながら
あらあらしくみだれて、
つぼみの花の裂(さ)けるおとをつらねてゆく。
こゑよ、
四月のあらあらしいこゑよ、
みだれても みだれても
やはらかいおまへの顔は
うすい絹のおもてにうつる青い蝶蝶の群れ咲(ざ)き
# by herrokatty | 2006-02-18 15:49

十六歳の少年の顔

 足

うすいこさめのふる日です、
わたしのまへにふたりのむすめがゆきました。
そのひとりのむすめのしろい足のうつくしさをわたしはわすれない。
せいじいろの爪(つま)かはからこぼれてゐるまるいなめらかなかかとは、
ほんのりとあからんで、
はるのひのさくらの花びらのやうになまめいてゐました。
こいえびちやのはなをがそのはなびらをつつんでつやつやとしてゐました。

ああ うすいこさめのふる日です。
あはい春のこころのやうなうつくしい足のゆらめきが、
ぬれたしろい水鳥(みづどり)のやうに
おもひのなかにかろくうかんでゐます。


  恋人を抱く空想

ちひさな風がゆく、
ちひさな風がゆく、
おまへの眼をすべり、
おまへのゆびのあひだをすべり、
しろいカナリヤのやうに
おまへの乳房のうへをすべりすべり、
ちひさな風がゆく。
ひな菊と さくらさうと あをいばらの花とがもつれもつれ、
おまへのまるい肩があらしのやうにこまかにこまかにふるへる。


  西蔵のちひさな鐘

むらさきのつばきの花をぬりこめて、
かの宗門のよはひのみぞにはなやかなともしびをかかげ、
憂愁のやせさらぼへた馬の背にうたたねする鐘よ、
そのほのぐらい銀色のつめたさは
さやさやとうすじろく、うすあをく、
嵐気(らんき)にかくされた その風貌の刺(とげ)のなまなましさ。
鐘は僧形のあしのうらに疑問のいぼをうゑ、
くまどりをおしせまり、
笹の葉のとぐろをまいて、
わかれてもわかれてもつきせぬきづなの魚(うを)を生かす。


  さびしいかげ

この ひたすらにうらさびしいかげはどこからくるのか、
きいろい木(こ)の実のみのるとほい未来の木立のなかからか、
ちやうど 胸のさやさやとしたながれのなかに、
すずしげにおよぐしろい魚のやうである。


  あなたのこゑ

わたしの耳はあなたのこゑのうらもおもてもしつてゐる。
みづ苔(ごけ)のうへをすべる朝のそよかぜのやうなあなたのこゑも、
グロキシニヤのうぶげのなかにからまる夢のやうなあなたのこゑも、
つめたい真珠のたまをふれあはせて靄(もや)のなかにきくやうなあなたのこゑも、
銀(ぎん)と黄金(こがね)の太刀(たち)をひらひらとひらめかす幻想の太陽のやうなあなたのこゑも、
月をかくれ、
沼の水をかくれ、
水中のいきものをかくれ、
ひとりけざやかに雪のみねをのぼるやうな澄んだあなたのこゑも、
つばきの花やひなげしの花がぽとぽととおちるやうなひかりあるあなたのこゑも、
うすもののレースでわたしのたましひをやはらかくとりまくあなたのこゑも、
まひあがり、さてしづかにおりたつて、
あたりに気をかねながらささやく河原のなかの雲雀(ひばり)のやうなあなたのこゑも、
わたしはよくよく知つてゐる。
とほくのはうからにほふやうにながれてくるあなたのこゑのうつりかを、
わたしは夜のさびしさに、さびしさに、
いま、あなたのこゑをいくつもいくつもおもひだしてゐる。


  盲目の宝石商人

わたしは十二月のきりのこいばんがたに、
街のなかをとぼろとぼろとあるいてゆくめくらの商人(あきんど)です。
わたしの手もやはり霧のやうにあをくばうばうとのびてゆくのです。
ゆめのおもみのやうなきざはしがとびかひ、
わたしは手提の革箱(かはばこ)のなかに、
ぬめいろのトルコ玉をもち、
蛇の眼のやうなトルマリン、
おほきなひびきを人形師の糸でころがすザクロ石、
はなよめのやはらかい指にふさはしいうすむらさきのうすダイヤ、
わたしは空からおりてきた鉤(かぎ)のやうに、
つつまれた柳のほそい枝のかげにわれながら
まだらにうかぶ月の輪をめあてに、
さても とぼろとぼろとあるいてゆきます。


  十六歳の少年の顔
    ――思ひ出の自画像――

うすあをいかげにつつまれたおまへのかほには
五月のほととぎすがないてゐます。
うすあをいびろうどのやうなおまへのかほには
月のにほひがひたひたとしてゐます。
ああ みればみるほど薄月(うすづき)のやうな少年よ、
しろい野芥子(のげし)のやうにはにかんでばかりゐる少年よ、
そつと指でさはられても真赤になるおまへのかほ、
ほそい眉、
きれのながい眼のあかるさ、
ふつくらとしてしろい頬の花、
水草(みづくさ)のやうなやはらかいくちびる、
はづかしさと夢とひかりとでしなしなとふるへてゐるおまへのかほ。
# by herrokatty | 2006-02-18 15:48

手をのばす薔薇

  手をのばす薔薇

ばらよ おまへはわたしのあたまのなかで鴉のやうにゆれてゐる。
ふしぎなあまいこゑをたててのどをからす野鳩のやうに
おまへはわたしの思ひのなかでたはむれてゐる。
はねをなくした駒鳥のやうに
おまへは影(かげ)をよみながらあるいてゐる。

このやうにさびしく ゆふぐれとよるとのくるたびに
わたしの白薔薇の花はいきいきとおとづれてくるのです。
みどりのおびをしめて まぼろしによみがへつてくる白薔薇の花、
おまへのすがたは生きた宝石の蛇、
かつ かつ かつととほいひづめのおとをつたへるおまへのゆめ、
薔薇はまよなかの手をわたしへのばさうとして、
ぽたりぽたりちつていつた。
# by herrokatty | 2006-02-18 15:47

薔薇のもののけ

 薔薇のもののけ

あさとなく ひるとなく よるとなく
わたしのまはりにうごいてゐる薔薇のもののけ、
おまへはみどりのおびをしゆうしゆうとならしてわたしの心をしばり、
うつりゆくわたしのからだに、
たえまない火のあめをふらすのです。
# by herrokatty | 2006-02-18 15:47