ビデオ人間参上
2007-01-03T14:32:06+09:00
herrokatty
ビデオばかり見ている僕です
Excite Blog
奈何(いか)にも倦(う)んじき
http://herrokatty.exblog.jp/857135/
2007-02-19T18:20:00+09:00
2006-02-19T18:21:05+09:00
2006-02-19T18:20:50+09:00
herrokatty
未分類
「嫌な天氣だな。」と俊男は、奈何(いか)にも倦(う)んじきツた躰(てい)で、吻(ほ)ツと嘆息(ためいき)する。「そりや此樣(こん)な不快を與へるのは自然の威力で、また權利でもあるかも知れん。けれども此樣(こん)な氣候にも耐えてゐなければならんといふ人間は意久地(いくぢ)無(な)しだ。要するに人間といふ奴(やつ)は、雨を防(ふせ)ぐ傘を作(こしら)へる智慧(ちゑ)はあるが、雨を降らさぬやうにするだけの力がないんだ。充(つま)らん動物さ、ふう。」と鼻の先に皺(しわ)を寄せて神經的の薄笑(うすわらひ)をした。
何しろ退屈(たいくつ)で仕方(しかた)が無い。そこで少し體を起して廣くもない庭を見※して見る。庭の植込(うゑこみ)は雜然(ざつぜん)として是(これ)と目に付(つ)く程の物も無い。それでゐて青葉が繁(しげ)りに繁(しげ)ツてゐる故(せい)か庭が薄暗い。其の薄暗い中に、紅(べに)や黄の夏草の花がポツ/\見える。地べたは青く黒ずむだ苔(こけ)にぬら/\してゐた………眼の前の柱を見ると、蛞蝓(なめくぢ)の這(は)ツた跡(あと)が銀の線のやうに薄(う)ツすりと光ツてゐた。何を見ても沈(しづむ)だ光彩(くわうさい)である。それで妙に氣が頽(くづ)れて些(ちつ)とも氣が引(ひ)ツ立たぬ處へ寂(しん)とした家(うち)の裡(なか)から、ギコ/\、バイヲリンを引(ひ)ツ擦(こす)る響が起る。
]]>
徳永英明 壊れかけのレディオ
http://herrokatty.exblog.jp/4234547/
2007-01-03T14:32:05+09:00
2007-01-03T14:32:06+09:00
2007-01-03T14:32:06+09:00
herrokatty
未分類
OZMAなんかよりぜんぜんよかったのではないだろうか。
彼らは彼らでいい面があると思うが、紅白で彼らのやることを認める必要もないのではないだろうか。
わざわざ、謝罪文をのせるぐらいだったら、はじめから依頼するなよ。]]>
樹皮
http://herrokatty.exblog.jp/3658417/
2006-10-29T14:35:06+09:00
2006-10-29T14:35:06+09:00
2006-10-29T14:35:06+09:00
herrokatty
未分類
詐欺師や香具師(やし)の品玉やテクニックには『永代蔵』に狼(おおかみ)の黒焼や閻魔鳥(えんまちょう)や便覧坊(べらぼう)があり、対馬(つしま)行の煙草の話では不正な輸出商の奸策(かんさく)を喝破しているなど現代と比べてもなかなか面白い。『胸算用』には「仕かけ山伏」が「祈り最中に御幣(ごへい)ゆるぎ出(いで)、ともし火かすかになりて消」ゆる手品の種明かし、樹皮下に肉桂(にっけい)を注射して立木を枯らす法などもある。
こういう種類の資料は勿論馬琴にもあり近松でさえ無くはないであろうが、ただこれが西鶴の中では如何にもリアルな実感をもって生きて働いている。これは著者が特にそうした知識に深い興味をもっていたためではないかと思われる。
西鶴がこういうテクニカルな方面における「独創」を尊重したのみならず、それをもって致富の要訣と考えていたことも彼の著書の到る処に窺(うかが)われる。例えば『永代蔵』の中では前記の紅染法の発明があり、「工夫のふかき男」が種々の改良農具「こまざらへ」「後家倒し」「打綿の唐品」などを製出した話、蓮の葉で味噌を包む新案、「行水舟」「刻昆布(きざみこんぶ)」「ちやんぬりの油土器(あぶらがわらけ)」「しぼみ形の莨入(たばこいれ)、外(ほか)の人のせぬ事」で三万両を儲けた話には「いかにはんじやうの所なればとて常のはたらきにて長者には成がたし」などと云っている。どんな行きつまった世の中でもオリジナルなアイディアさえあればいくらでも金儲けの道はあるというのが現代のヤンキー商人のモットーであるが、この事を元禄の昔に西鶴が道破しているのである。木綿をきり売りの手拭を下谷(したや)の天神で売出した男の話は神宮外苑のパン、サイダー売りを想わせ、『諸国咄』の終りにある、江戸中の町を歩いて落ちた金や金物を拾い集めた男の話は、近年隅田川口の泥ざらえで儲けた人の話を想い出させて面白い。これの高じたものが沈没船引上げの魂胆となるのである。
大して金儲けには関係はないが、『織留』の中にある猫の蚤取(のみとり)法や、咽喉(のど)にささった釣針を外ずす法なども独創的巧智の例として挙げたものと見られる。
]]>
河原
http://herrokatty.exblog.jp/3052309/
2006-08-11T23:27:11+09:00
2006-08-11T23:27:11+09:00
2006-08-11T23:27:11+09:00
herrokatty
未分類
「さぁ、流れて来るぞ。みんなとれ。」としゅっこ[#「しゅっこ」に傍点]が云った。まもなく、小指ぐらゐの茶いろなかじかが、横向きになって流れて来たので、取らうとしたら、うしろのはうで三郎が、まるで瓜(うり)をすするときのやうな声を出した。六寸ぐらゐある鮒(ふな)をとって、顔をまっ赤にしてよろこんでゐたのだった。
「だまってろ、だまってろ。」しゅっこ[#「しゅっこ」に傍点]が云った。
そのとき、向ふの白い河原を、肌ぬぎになったり、シャツだけ着たりした大人や子どもらが、たくさんかけて来た。そのうしろからは、ちゃうど活動写真のやうに、一人の網シャツを着た人が、はだか馬に乗って、まっしぐらに走って来た。みんな発破(はっぱ)の音を聞いて、見に来たのだ。
庄助(しゃうすけ)は、しばらく腕を組んで、みんなのとるのを見てゐたが、
「さっぱり居なぃな。」と云った。けれども、あんなにとれたらたくさんだ。煉瓦場(れんぐわば)の人たちなんか、三十疋(ぴき)ぐらゐもとったんだから。ぼくらも、一疋か二疋なら誰(たれ)だって拾った。庄助は、だまって、また上流(かみ)へ歩きだした。煉瓦場の人たちもついて行った。網シャツの人は、馬に乗って、またかけて行ったし、子どもらは、ぼくらの仲間にはひらうと、岸に座って待ってゐた。
「発破かけだら、雑魚(ざこ)撒(ま)かせ。」三郎が、河原の砂っぱの上で、ぴょんぴょんはねながら、高く叫んだ。
ぼくらは、とった魚を、石で囲んで、小さな生洲(いけす)をこしらへて、生き返っても、もう遁(に)げて行かないやうにして、また石取りをはじめた。ほんたうに暑くなって、ねむの木もぐったり見えたし、空もまるで、底なしの淵(ふち)のやうになった。
]]>
庄助
http://herrokatty.exblog.jp/3052305/
2006-08-11T23:26:53+09:00
2006-08-11T23:26:53+09:00
2006-08-11T23:26:53+09:00
herrokatty
未分類
しゅっこ[#「しゅっこ」に傍点]だって毎日行く。しゅっこは、舜一(しゅんいち)なんだけれども、みんなはいつでもしゅっこ[#「しゅっこ」に傍点]といふ。さういはれても、しゅっこは少しも怒らない。だからみんなは、いつでもしゅっこしゅっこ[#「しゅっこしゅっこ」に傍点]といふ。ぼくは、しゅっことは、いちばん仲がいい。けふもいっしょに、出かけて行った。
ぼくらが、さいかち淵で泳いでゐると、発破(はっぱ)をかけに、大人も来るからおもしろい。今日のひるまもやって来た。
石神(いしがみ)の庄助(しゃうすけ)がさきに立って、そのあとから、煉瓦場(れんぐわば)の人たちが三人ばかり、肌ぬぎになったり、網を持ったりして、河原のねむの木のとこを、こっちへ来るから、ぼくは、きっと発破だとおもった。しゅっこも、大きな白い石をもって、淵の上のさいかちの木にのぼってゐたが、それを見ると、すぐに、石を淵に落して叫んだ。
「おゝ、発破だぞ。知らないふりしてろ。石とりやめて、早くみんな、下流(しも)へさがれ。」
そこでみんなは、なるべくそっちを見ないやうにしながら、いっしょに下流(しも)の方へ泳いだ。しゅっこ[#「しゅっこ」に傍点]は、木の上で手を額にあてて、もう一度よく見きはめてから、どぶんと逆(さかさ)まに淵へ飛びこんだ。それから水を潜(くぐ)って、一ぺんにみんなへ追ひついた。
ぼくらは、淵の下流(しも)の、瀬になったところに立った。
「知らないふりして遊んでろ。みんな。」しゅっこ[#「しゅっこ」に傍点]が云(い)った。ぼくらは、砥石(といし)をひろったり、せきれいを追ったりして、発破のことなぞ、すこしも気がつかないふりをしてゐた。
向ふの淵の岸では、庄助が、しばらくあちこち見まはしてから、いきなりあぐらをかいて、砂利の上へ座ってしまった。それからゆっくり、腰からたばこ入れをとって、きせるをくはへて、ぱくぱく煙をふきだした。奇体だと思ってゐたら、また腹かけから、何か出した。
]]>
おおそれみよ
http://herrokatty.exblog.jp/1552873/
2006-04-01T20:24:41+09:00
2006-04-01T20:24:41+09:00
2006-04-01T20:24:41+09:00
herrokatty
未分類
って言っている場合か~~~~~~~~
でもないぞ。
どうしてくれるんだ。
わからない。]]>
四月の顔
http://herrokatty.exblog.jp/840597/
2006-02-18T15:49:06+09:00
2006-02-18T15:49:06+09:00
2006-02-18T15:49:06+09:00
herrokatty
未分類
風のやうにおまへはわたしをとほりすぎた。
枝にからまる風のやうに、
葉のなかに真夜中をねむる風のやうに、
みしらぬおまへがわたしの心のなかを風のやうにとほりすぎた。
四月だといふのにまだ雪の深い北国(ほつこく)へかへるおまへは、
どんなにさむざむとしたよそほひをしてゆくだらう。
みしらぬお前がいつとはなしにわたしの心のうへにちらした花びらは、
きえるかもしれない、きえるかもしれない。
けれども、おまへのいたいけな心づくしは、
とほい鐘のねのやうにいつまでもわたしをなぐさめてくれるだらう。
焦心のながしめ
むらがりはあをいひかりをよび、
きえがてにゆれるほのほをうづめ、
しろく しろく あゆみゆくこのさびしさ。
みづのおもての花でもなく、
また こずゑのゆふぐれにかかる鳥のあしおとでもなく、
うつろから うつろへとはこばれる焦心(せうしん)のながしめ、
欝金香(うつこんかう)の花ちりちりと、
こころは 雪をいただき、
こころは みぞれになやみ、
こころは あけがたの細雨(ほそあめ)にまよふ。
四月の顔
ひかりはそのいろどりをのがれて、
あしおともかろく
かぎろひをうみつつ、
河のほとりにはねをのばす。
四月の顔はやはらかく、
またはぢらひのうちに溶(と)けながら
あらあらしくみだれて、
つぼみの花の裂(さ)けるおとをつらねてゆく。
こゑよ、
四月のあらあらしいこゑよ、
みだれても みだれても
やはらかいおまへの顔は
うすい絹のおもてにうつる青い蝶蝶の群れ咲(ざ)き
]]>
十六歳の少年の顔
http://herrokatty.exblog.jp/840591/
2006-02-18T15:48:35+09:00
2006-02-18T15:48:35+09:00
2006-02-18T15:48:35+09:00
herrokatty
未分類
うすいこさめのふる日です、
わたしのまへにふたりのむすめがゆきました。
そのひとりのむすめのしろい足のうつくしさをわたしはわすれない。
せいじいろの爪(つま)かはからこぼれてゐるまるいなめらかなかかとは、
ほんのりとあからんで、
はるのひのさくらの花びらのやうになまめいてゐました。
こいえびちやのはなをがそのはなびらをつつんでつやつやとしてゐました。
ああ うすいこさめのふる日です。
あはい春のこころのやうなうつくしい足のゆらめきが、
ぬれたしろい水鳥(みづどり)のやうに
おもひのなかにかろくうかんでゐます。
恋人を抱く空想
ちひさな風がゆく、
ちひさな風がゆく、
おまへの眼をすべり、
おまへのゆびのあひだをすべり、
しろいカナリヤのやうに
おまへの乳房のうへをすべりすべり、
ちひさな風がゆく。
ひな菊と さくらさうと あをいばらの花とがもつれもつれ、
おまへのまるい肩があらしのやうにこまかにこまかにふるへる。
西蔵のちひさな鐘
むらさきのつばきの花をぬりこめて、
かの宗門のよはひのみぞにはなやかなともしびをかかげ、
憂愁のやせさらぼへた馬の背にうたたねする鐘よ、
そのほのぐらい銀色のつめたさは
さやさやとうすじろく、うすあをく、
嵐気(らんき)にかくされた その風貌の刺(とげ)のなまなましさ。
鐘は僧形のあしのうらに疑問のいぼをうゑ、
くまどりをおしせまり、
笹の葉のとぐろをまいて、
わかれてもわかれてもつきせぬきづなの魚(うを)を生かす。
さびしいかげ
この ひたすらにうらさびしいかげはどこからくるのか、
きいろい木(こ)の実のみのるとほい未来の木立のなかからか、
ちやうど 胸のさやさやとしたながれのなかに、
すずしげにおよぐしろい魚のやうである。
あなたのこゑ
わたしの耳はあなたのこゑのうらもおもてもしつてゐる。
みづ苔(ごけ)のうへをすべる朝のそよかぜのやうなあなたのこゑも、
グロキシニヤのうぶげのなかにからまる夢のやうなあなたのこゑも、
つめたい真珠のたまをふれあはせて靄(もや)のなかにきくやうなあなたのこゑも、
銀(ぎん)と黄金(こがね)の太刀(たち)をひらひらとひらめかす幻想の太陽のやうなあなたのこゑも、
月をかくれ、
沼の水をかくれ、
水中のいきものをかくれ、
ひとりけざやかに雪のみねをのぼるやうな澄んだあなたのこゑも、
つばきの花やひなげしの花がぽとぽととおちるやうなひかりあるあなたのこゑも、
うすもののレースでわたしのたましひをやはらかくとりまくあなたのこゑも、
まひあがり、さてしづかにおりたつて、
あたりに気をかねながらささやく河原のなかの雲雀(ひばり)のやうなあなたのこゑも、
わたしはよくよく知つてゐる。
とほくのはうからにほふやうにながれてくるあなたのこゑのうつりかを、
わたしは夜のさびしさに、さびしさに、
いま、あなたのこゑをいくつもいくつもおもひだしてゐる。
盲目の宝石商人
わたしは十二月のきりのこいばんがたに、
街のなかをとぼろとぼろとあるいてゆくめくらの商人(あきんど)です。
わたしの手もやはり霧のやうにあをくばうばうとのびてゆくのです。
ゆめのおもみのやうなきざはしがとびかひ、
わたしは手提の革箱(かはばこ)のなかに、
ぬめいろのトルコ玉をもち、
蛇の眼のやうなトルマリン、
おほきなひびきを人形師の糸でころがすザクロ石、
はなよめのやはらかい指にふさはしいうすむらさきのうすダイヤ、
わたしは空からおりてきた鉤(かぎ)のやうに、
つつまれた柳のほそい枝のかげにわれながら
まだらにうかぶ月の輪をめあてに、
さても とぼろとぼろとあるいてゆきます。
十六歳の少年の顔
――思ひ出の自画像――
うすあをいかげにつつまれたおまへのかほには
五月のほととぎすがないてゐます。
うすあをいびろうどのやうなおまへのかほには
月のにほひがひたひたとしてゐます。
ああ みればみるほど薄月(うすづき)のやうな少年よ、
しろい野芥子(のげし)のやうにはにかんでばかりゐる少年よ、
そつと指でさはられても真赤になるおまへのかほ、
ほそい眉、
きれのながい眼のあかるさ、
ふつくらとしてしろい頬の花、
水草(みづくさ)のやうなやはらかいくちびる、
はづかしさと夢とひかりとでしなしなとふるへてゐるおまへのかほ。
]]>
手をのばす薔薇
http://herrokatty.exblog.jp/840580/
2006-02-18T15:47:48+09:00
2006-02-18T15:47:48+09:00
2006-02-18T15:47:48+09:00
herrokatty
未分類
ばらよ おまへはわたしのあたまのなかで鴉のやうにゆれてゐる。
ふしぎなあまいこゑをたててのどをからす野鳩のやうに
おまへはわたしの思ひのなかでたはむれてゐる。
はねをなくした駒鳥のやうに
おまへは影(かげ)をよみながらあるいてゐる。
このやうにさびしく ゆふぐれとよるとのくるたびに
わたしの白薔薇の花はいきいきとおとづれてくるのです。
みどりのおびをしめて まぼろしによみがへつてくる白薔薇の花、
おまへのすがたは生きた宝石の蛇、
かつ かつ かつととほいひづめのおとをつたへるおまへのゆめ、
薔薇はまよなかの手をわたしへのばさうとして、
ぽたりぽたりちつていつた。]]>
薔薇のもののけ
http://herrokatty.exblog.jp/840577/
2006-02-18T15:47:22+09:00
2006-02-18T15:47:22+09:00
2006-02-18T15:47:22+09:00
herrokatty
未分類
あさとなく ひるとなく よるとなく
わたしのまはりにうごいてゐる薔薇のもののけ、
おまへはみどりのおびをしゆうしゆうとならしてわたしの心をしばり、
うつりゆくわたしのからだに、
たえまない火のあめをふらすのです。
]]>
籠
http://herrokatty.exblog.jp/840574/
2006-02-18T15:47:01+09:00
2006-02-18T15:47:01+09:00
2006-02-18T15:47:01+09:00
herrokatty
未分類
そのすがたからは空色のみづがながれ、
きよらかな、ものを吸ふやうな眼、
けだかい鼻、
つゆをやどしてゐるやうなときいろの頬、
あまい唾をためてゐるちひさい唇。
黄金(きん)のランプのやうに、
あなたのひかりはやはらかにもえてゐる。
椅子に眠る憂欝
はればれとその深い影をもつた横顔を
花鉢(はなばち)のやうにしづかにとどめ、
揺椅子(ゆりいす)のなかにうづくまる移り気をそそのかして、
死のすがたをおぼろにする。
みどりいろの、ゆふべの揺椅子のなやましさに、
みじかい生(せい)の花粉のさかづきをのみほすのか。
ああ、わたしのほとりに匍(は)ひよるみどりの椅子のささやきの小唄、
憂欝はながれる魚(うを)のかなしみにも似て、ゆれながら、ゆれながら、
かなしみのさざなみをくりかへす。
まぼろしの薔薇
はるはきたけれど、
わたしはさびしい。
ひとつのかげのうへにまたおもいかげがかさなり、
わたしのまぼろしのばらをさへぎる。
ふえのやうなほそい声でうたをうたふばらよ、
うつくしい悩みのたねをまくみどりのおびのしろばらよ、
うすぐもりした春のこみちに、
ばらよ、ばらよ、まぼろしのしろばらよ、
わたしはむなしくおまへのかげをもとめては、
こころもなくさまよひあるくのです。
*
かすかな白鳥(はくてう)のはねのやうに
まよなかにさきつづく白ばらの花、
わたしのあはせた手のなかに咲きいでるまぼろしの花、
さきつづくにほひの白ばらよ、
こころをこめたいのりのなかに咲きいでるほのかなばらよ、
ああ、なやみのなかにさきつづく
にほひのばらよ、にほひのばらよ、
おまへのながいまつげが
わたしをさしまねく。
*
まつしろいほのほのなかに、
おまへはうつくしい眼をとぢてわたしをさそふ。
ゆふぐれのこみちにうかみでるしろばらよ、
うすやみにうかみでるみどりのおびのしろばらよ、
おまへはにほやかな眼をとぢて、
わたしのさびしいむねに花をひらく。
*
なやましくふりつもるこころのおくの薔薇(ばら)の花よ、
わたしはかくすけれども、
よるのふけるにつれてまざまざとうかみでるかなしいしろばらの花よ、
さまざまのおもひをこめたおまへの秘密のかほが、
みづのなかの月のやうに
はてしのないながれのなかにうかんでくる。
*
ひとひら、またひとひら、ふくらみかけるつぼみのばらのはな、
そのままに、ゆふべのこゑをにほはせるばらのかなしみ、
ただ、まぼろしのなかへながれてゆくわたしのしろばらの花よ、
おまへのまつしろいほほに、
わたしはさびしいこほろぎのなくのをききます。
*
ゆふぐれのかげのなかをあるいてゆくしめやかなこひびとよ、
こゑのないことばをわたしのむねにのこしていつた白薔薇の花よ、
うすあをいまぼろしのぬれてゐるなかに
ふたりのくちびるがふれあふたふとさ。
ひごとにあたらしくうまれでるあの日のばらのはな、
つめたいけれど、
ひとすぢのゆくへをたづねるこころは、
おもひでの籠(かご)をさげてゆきます。
]]>
蜘蛛のをどり
http://herrokatty.exblog.jp/840543/
2006-02-18T15:44:24+09:00
2006-02-18T15:44:24+09:00
2006-02-18T15:44:24+09:00
herrokatty
未分類
あらあらしく野のをかに歩みをはこぶ
ゆふぐれのさびれたたましひのおともないはばたき、
うすぐらいともしびのゆらめくたのしさにも似て、
さそはれる微笑の釣針のうつくしさ。
うちつける壁も扉も窓もなく、
むなしくあを空のふかみの底に身をなげ、
世紀のあをあをとながれるうれひ顔のうへに、
こともなげに、ひそかにも、
うつりゆく香料のたいまつをもやしつづけた。
いつぴきの黄色い大蜘蛛は
手品のやうにするすると糸をたれて、
そのふしぎな心の運命(さだめ)を織る。
ああ、
ゆふぐれの野のはてにひとりつぶやく太陽の
かなしくゆがんだわらひ顔、
黄色い蜘蛛はた・た・たと織りつづける。
女のやうにべつたりとしたおほきな蜘蛛は、
くたびれるのもしらないで、
足も 手も ぐるぐるする眼も
葉ずれの蘆のやうに、するどくするどくうごいてゐる。
指頭の妖怪
あをじろむ指のさきから、
小鳥がまひたつてゆく。
ぎらぎらにくもる地面の床(とこ)のうへに、
片足でおとろへはてながら、
うづまきながらのしかかつてくる。
まつくろな蛇の腹のやうな太鼓のおとが
ぼろんぼろんとなげくのだ。
わたしのあをじろむ指のさきからにげてゆく月夜の雨、
毛ばだつた秋の果物(くだもの)のやうな
ふといぬめぬめとした頸(くび)をねぢらせ、
なまめく頸をねぢらせ、
秋のこゑをつぶやき、
秋のつめたさをおさへつける。
ぼろんぼろんとやぶれた魂の糸をかきならし、
熱く、ものうく、身をかきむしつて、
さびしい秋のつめたさをおさへつける。
まがりくねつた この秋のさびしさを、
あやしくふりむけるお前のなまなましい頸のうめきに、
たよりなくもとほざけるのだ。
しろくひかる粘液をひいて、
うねりをうつお前の頸に
なげつけられた言葉の世にも稀なにほひ。
ぼろんぼろんと
わたしの遠耳にきこえてくるあやしい太鼓のおと。
]]>
青磁の皿
http://herrokatty.exblog.jp/840539/
2006-02-18T15:43:53+09:00
2006-02-18T15:43:53+09:00
2006-02-18T15:43:53+09:00
herrokatty
未分類
白い狼が
わたしの背中でほえてゐる。
白い狼が
わたしの胸で、わたしの腹で、
うをう うをうとほえてゐる。
こえふとつた白い狼が
わたしの腕で、わたしの股(もも)で、
ぼう ぼうとほえてゐる。
犬のやうにふとつた白い狼が
真赤な口をあいて、
なやましくほえさけびながら、
わたしのからだぢゆうをうろうろとあるいてゐる。
盲目の鴉
うすももいろの瑪瑙の香炉から
あやしくみなぎるけむりはたちのぼり、
かすかに迷ふ茶色の蛾は
そこに白い腹をみせてたふれ死ぬ。
秋はかうしてわたしたちの胸のなかへ
おともないとむらひのやうにやつてきた。
しろくわらふ秋のつめたいくもり日(び)に、
めくら鴉(がらす)は枝から枝へ啼いてあるいていつた。
裂かれたやうな眼がしらの鴉よ、
あぢさゐの花のやうにさまざまの雲をうつす鴉の眼よ、
くびられたやうに啼きだすお前のこゑは秋の木(こ)の葉をさへちぢれさせる。
お前のこゑのなかからは、
まつかなけしの花がとびだしてくる。
うすにごる青磁の皿のうへにもられた兎の肉をきれぎれに噛む心地にて、
お前のこゑはまぼろしの地面に生える雑草である。
羽根をひろげ、爪をかき、くちばしをさぐつて、
枝から枝へあるいてゆくめくら鴉は、
げえを げえを とおほごゑにしぼりないてゐる。
無限につながる闇の宮殿のなかに、
あをじろくほとばしるいなづまのやうに
めくら鴉のなきごゑは げえを げえを げえをとひびいてくる。
]]>
まるい鳥
http://herrokatty.exblog.jp/840534/
2006-02-18T15:43:27+09:00
2006-02-18T15:43:27+09:00
2006-02-18T15:43:27+09:00
herrokatty
未分類
その鼻をそろへ、
その肩をそろへ、
おうおうとひくいうなりごゑに身をしづませる二疋(ひき)の犬。
そのせはしい息をそろへ、
その眼は赤くいちごのやうにふくらみ、
さびしさにおうおうとふるへる二ひきの犬。
沼のぬくみのうちにほころびる水草(すゐさう)の肌のやうに、
なんといふなめらかさを持つてゐることだらう、
つやつやと月夜のやうにあかるい毛なみよ、
さびしさにくひしばる犬は
おうおうとをののきなきさけんで、
ほの黄色い夕闇(ゆふやみ)のなかをまひあがるのだ。
しろい爪をそろへて、
ふたつの犬はよぢのぼる蔓草(つるくさ)のやうに
ほのきいろい夕闇の無言のなかへまひあがるのだ。
そのくるしみをかはしながら、
さだめない大空のなかへゆくふたつの犬よ、
やせた肩をごらん、
ほそいしつぽをごらん、
おまへたちもやつぱりたえまなく消えてゆくものの仲間だ。
ほのきいろい夕空のなかへ、
ふたつのものはくるしみをかはしながらのぼつてゆく。
林檎料理
手にとつてみれば
ゆめのやうにきえうせる淡雪(あはゆき)りんご、
ネルのきものにつつまれた女のはだのやうに
ふうはりともりあがる淡雪りんご、
舌のとけるやうにあまくねばねばとして
嫉妬のたのしい心持にも似た淡雪りんご、
まつしろい皿のうへに
うつくしくもられて泡をふき、
香水のしみこんだ銀のフオークのささるのを待つてゐる。
とびらをたたく風のおとのしめやかな晩、
さみしい秋の
林檎料理のなつかしさよ。
まるい鳥
をんなはまるい線をゑがいて
みどりのふえをならし、
をんなはまるい線をひいて
とりのはねをとばせる。
をんなはまるい線をふるはせて
あまいにがさをふりこぼす。
をんなは鳥だ、
をんなはまるい鳥だ。
だまつてゐながらも、
しじゆうなきごゑをにほはせる。
]]>
ヒヤシンスの唄
http://herrokatty.exblog.jp/840508/
2006-02-18T15:40:33+09:00
2006-02-18T15:40:33+09:00
2006-02-18T15:40:33+09:00
herrokatty
未分類
岡をのぼる人よ、
野をたどる人よ、
さてはまた、とびらをとぼとぼとたたく人よ
春のひかりがゆれてくるではないか。
わたしたちふたりは
朱と金との揺椅子(ゆりいす)のうへに身をのせて、
このベエルのやうな氛気(ふんき)とともに、かろくかろくゆれてみよう、
あの温室にさくふうりん草(さう)のくびのやうに。
法性のみち
わたしはきものをぬぎ、
じゆばんをぬいで、
りんごの実のやうなはだかになつて、
ひたすらに法性(ほふしやう)のみちをもとめる。
わたしをわらふあざけりのこゑ、
わたしをわらふそしりのこゑ、
それはみなてる日にむされたうじむしのこゑである。
わたしのからだはほがらかにあけぼのへはしる。
わたしのあるいてゆく路のくさは
ひとつひとつをとめとなり、
手をのべてはわたしの足をだき、
唇をだしてはわたしの膝をなめる。
すずしくさびしい野辺のくさは、
うつくしいをとめとなつて豊麗なからだをわたしのまへにさしのべる。
わたしの青春はけものとなつてもえる。
金属の耳
わたしの耳は
金糸(きんし)のぬひはくにいろづいて、
鳩のにこ毛のやうな痛みをおぼえる。
わたしの耳は
うすぐろい妖鬼の足にふみにじられて、
石綿(いしわた)のやうにかけおちる。
わたしの耳は
祭壇のなかへおひいれられて、
そこに印呪をむすぶ金物(かなもの)の像となつた。
わたしの耳は
水仙の風のなかにたつて、
物の招きにさからつてゐる。
妬心の花嫁
このこころ、
つばさのはえた、角(つの)の生えたわたしの心は、
かぎりなくも温熱(をんねつ)の胸牆(きようしやう)をもとめて、
ひたはしりにまよなかの闇をかける。
をんなたちの放埓(はうらつ)はこの右の手のかがみにうつり、
また疾走する吐息のかをりはこの左の手のつるぎをふるはせる。
妖気の美僧はもすそをひいてことばをなげき、
うらうらとして銀鈴の魔をそよがせる。
ことなれる二つの性は大地のみごもりとなつて、
谷間に老樹(らうじゆ)をうみ、
野や丘にはひあるく二尾(ふたを)の蛇をうむ。
蛙にのつた死の老爺
灰色の蛙の背中にのつた死が、
まづしいひげをそよがせながら、
そしてわらひながら、
手をさしまねいてやつてくる。
その手は夕暮をとぶ蝙蝠のやうだ。
年をとつた死は
蛙のあゆみののろいのを気にもしないで、
ふはふはとのつかつてゐる。
その蛙は横からみると金色(きんいろ)にかがやいてゐる、
まへからみると二つの眼がとびでて黒くひかつてゐる。
死の顔はしろく、そして水色にすきとほつてゐる。
死の老爺(おやぢ)はこんな風にして、ぐるりぐるりと世界のなかをめぐつてゐる。
日輪草
そらへのぼつてゆけ、
心のひまはり草(さう)よ、
きんきんと鈴をふりならす階段をのぼつて、
おほぞらの、あをいあをいなかへはひつてゆけ、
わたしの命(いのち)は、そこに芽をふくだらう。
いまのわたしは、くるしいさびしい悪魔の羂(わな)につつまれてゐる。
ひまはり草よ、
正直なひまはり草よ、
鈴のねをたよりにのぼつてゆけ、のぼつてゆけ、
空をまふ魚(うを)のうろこの鏡は、
やがておまへの姿をうつすだらう。
ふくらんだ宝玉
ある夕方、一疋のおほきな蝙蝠が、
するどい叫びをだしてかけまはつた。
茶と青磁との空は
大口をあいてののしり、
おもい憎悪をしたたらし、
ふるい樹のうつろのやうに蝙蝠の叫びを抱きかかへた。
わたしは眺めると、
あなたこなたに、ふさふさとした神のしろい髪がたれてゐた。
幻影のやうにふくらんだ宝玉は、
水蛭(みづびる)のやうにうごめいて、
おたがひの身をすりつけた。
ふくらんだ宝玉はおひおひにわたしの脳をかたちづくつた。
足をみがく男
わたしは足をみがく男である。
誰のともしれない、しろいやはらかな足をみがいてゐる。
そのなめらかな甲の手ざはりは、
牡丹の花のやうにふつくりとしてゐる。
わたしのみがく桃色のうつくしい足のゆびは、
息のあるやうにうごいて、
わたしのふるへる手は涙をながしてゐる。
もう二度とかへらないわたしの思ひは、
ひばりのごとく、自由に自由にうたつてゐる。
わたしの生の祈りのともしびとなつてもえる見知らぬ足、
さわやかな風のなかに、いつまでもそのままにうごいてをれ。
むらがる手
空はかたちもなくくもり、
ことわりもないわたしのあたまのうへに、
錨(いかり)をおろすやうにあまたの手がむらがりおりる。
街のなかを花とふりそそぐ亡霊のやうに、
ひとしづくの胚珠(はいしゆ)をやしなひそだてて、
ほのかなる小径の香(か)をさがし、
もつれもつれる手の愛にわたしのあたまは野火のやうにもえたつ。
しなやかに、しろくすずしく身ぶるひをする手のむれは、
今わたしのあたまのなかの王座をしめて相姦(さうかん)する。
怪物
からだは翁草(おきなぐさ)の髪のやうに亜麻色の毛におほはれ、
顔は三月の女鴉(をんなからす)のやうに憂欝にしづみ、
四つの足ではひながらも
ときどきうすい爪でものをかきむしる。
そのけものは ひくくうめいて寝ころんだ。
曇天の日没は銀のやうにつめたく火花をちらし、
けもののかたちは 黒くおそろしくなつて、
微風とともにかなたへあゆみさつた。
花をひらく立像
手をあはせていのります。
もののまねきはしづかにおとづれます。
かほもわかりません、
髪のけもわかりません、
いたいたしく、ひとむれのにほひを背おうて、
くらいゆふぐれの胸のまへに花びらをちらします。
めくらの蛙
闇のなかに叫びを追ふものがあります。
それはめくらの蛙です。
ほのぼのとたましひのほころびを縫ふこゑがします。
あたまをあげるものは夜(よる)のさかづきです。
くちなし色の肉を盛(も)る夜のさかづきです。
それはなめらかにうたふ白磁のさかづきです。
蛙の足はびつこです。
蛙のおなかはやせてゐます。
蛙の眼はなみだにきずついてゐます。
つめたい春の憂欝
にほひ袋をかくしてゐるやうな春の憂欝よ、
なぜそんなに わたしのせなかをたたくのか、
うすむらさきのヒヤシンスのなかにひそむ憂欝よ、
なぜそんなに わたしの胸をかきむしるのか、
ああ、あの好きなともだちはわたしにそむかうとしてゐるではないか、
たんぽぽの穂のやうにみだれてくる春の憂欝よ、
象牙のやうな手でしなをつくるやはらかな春の憂欝よ、
わたしはくびをかしげて、おまへのするままにまかせてゐる。
つめたい春の憂欝よ、
なめらかに芽生えのうへをそよいでは消えてゆく
かなしいかなしいおとづれ。
ヒヤシンスの唄
ヒヤシンス、ヒヤシンス、
四月になつて、わたしの眠りをさましてくれる石竹色のヒヤシンス、
気高い貴公子のやうなおもざしの青白色のヒヤシンスよ、
さては、なつかしい姉のやうにわたしの心を看(み)まもつてくれる紫のおほきいヒヤシンスよ、
とほくよりクレーム色に塗つた小馬車をひきよせる魔術師のヒヤシンスよ、
そこには、白い魚のはねるやうな鈴が鳴る。
たましひをあたためる銀の鈴が鳴る。
わたしを追ひかけるヒヤシンスよ、
わたしはいつまでも、おまへの眼のまへに逃げてゆかう。
波のやうにとびはねるヒヤシンスよ、
しづかに物思ひにふけるヒヤシンスよ。
]]>
https://www.excite.co.jp/
https://www.exblog.jp/
https://ssl2.excite.co.jp/